scene.6

 長い回想が終わり、千里は目を開いた。
 何度思い返しても、混乱の度合いが深まるばかりだ。
 何か薬らしきものを飲まされ、眠らされているうちに、この部屋に閉じ込められたのは確かだ。
 結局、それ以外の事は何一つ分からない。

(ううん…もうひとつ  


  お前の、その幸せそうな顔が…本当に嫌いだ。


 それは、意識の途切れる間際に千里の耳に届いた最後の言葉だった。
 千里がもう一つ知っている事。

(そのくらい、嫌われてるってこと…)

 この地下室で目覚めるまで  
 目覚めた後もいつまでも反響して止まない、彼の最後の言葉。

(まるで、悪い夢でも見てるみたいだ)

 そう、ちょうど薄暗い童話の世界にに迷い込んでしまった様に。



 塔の天辺には誰がいる?

 お姫様は地下にいる。



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